虚無の穴

皆様ご機嫌麗しう。

こちらは霧雨降るブルックリンでございます。

昨日は気温が32度まで上がったのに、今日は一気に12度前後。夜の気温は10度を切るらしく、本格的に秋の模様です。

しっとりと濡れた大都会。美しい季節の始まりです。

(インスタ映え終了)

ハタがこのアメリカという国にやってきてからもう直ぐ15年が経とうとしております。あの当時から比較したら本当に便利になりましたよねえ。特にyoutubeとかの映像系。これがあれば本当に世界で何が起こっているかがリアルタイムでわかります。そんな中ぼんやりとyoutubeを眺めていたらとんでもないニュースが入ってきました。あまりの衝撃的な内容でハタもちょっとどうして良いのかわからないのですが、皆様にこの緊急情報を広くお伝えしたく思います。

みなさんベーグルってご存知ですよね?あのドーナツみたいなパンみたいな、あれ。ハタも正直ベーグルの定義ってよくわからなかったんですよね。調べてみると生地自体はパンと同じらしいのですが、焼く前に一度茹でるという過程を経る事によってあの独特の食感を生み出す、というのはまあアメリカに住んでいるとある程度は共通知識というか常識の一部として共有していたのですが。どうやらそういう問題ではないようです。

まずはこちらの衝撃の映像をご覧ください。



お子様「おはようーえー今日ベーグルないの?」

お母さん「大丈夫、今日はこのマシーンがあるわ!」

ベーグルマシーン颯爽と登場。

お母さんは自信たっぷりにトーストに穴を開けます。

お子様「わーベーグルだー」

おいちょっと待て。


え?ベーグルの定義って「穴が空いてるかどうか」なの?生地とか焼き方とか、そういう味わいの部分じゃないの?穴さえあれば全ての存在はベーグルとして存在しうるという事なの?穴で全部決まるの?ちょっと信じられないのですが、これ、クリームチーズで有名なフィラデルフィアのコマーシャルなんですよね。こんな有名な会社がベーグルの定義を書き換えようとしているのでしょうか?それともベーグルというのは生地にあいた穴という虚空の存在によって定義される極めて抽象的な概念に基づいた食品なのでしょうか?虚無という非存在によって規定される存在。それはまさにインド哲学におけるゼロの発明と同じ重大さを持って我々に迫ってきます。実際ここのご家庭では全ての存在が「穴」によって「ベーグル化」されていくようです。トーストも、ワッフルも、ピザも全て「穴」という虚無を植え付けられる事によって別次元の「ベーグル」へと変化・収斂していくー何という事でしょう。ハタはベーグルのことを完全に誤解していたようです。

この動画で示されている真実ははただ一つ。

「ベーグルとは穴のある存在であり、穴があればいかなるものもベーグルと呼称して良い」ということ。

事実この動画では穴のある存在が全て「ベーグル」と認識され、ベーグルに欠かせないクリームチーズがたっぷりと塗られていきます。

そこにためらいなど一切ありません。逆にこのクリームチーズがたっぷりと塗られる事によってこの穴の空いた存在がまさにベーグルとして認識されているのだと強調しているとしか思えません。ほら、これはベーグルです。穴がありますから。だからクリームチーズがその上に塗られるべきなのです。だってベーグルですから。ベーグルにはクリームチーズですよね?クリームチーズをのせて美味しいのはベーグルしかありませんよね?という永遠の循環理論がこの虚無の穴によって生成されます。非存在によって生成される存在。そしてそこに塗られるクリームチーズ。あのマシンは全ての存在に虚無の穴を穿つ事によって全ての存在をベーグル化させていきます。

、、、、、はっ、突き詰めていけばベーグルとは虚無そのものであるという事ではないか!

まさに0という記号が非存在を表現するかのように、ベーグルはその存在を以て虚無そのものを表現しているという事ですね!

そしてそこにたっぷりと塗られるクリームチーズ。虚無とクリームチーズは一緒に食べると美味しいというもう一つの真実が導き出されます。

ベーグルと虚無、そしてクリームチーズ。深遠なる宇宙の真理。非存在によって規定される存在。そしてその宇宙にそっと寄り添うクリームチーズ。

アメリカ人のばかー(泣きながら)

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