歌声は響くよ

皆様ご機嫌麗しう。

こちらニューヨークも随分と空が高くなってきました。先日はブルックリンとマンハッタンをつなぐ橋をふらっと歩いて来ました。秋晴れの空の下、高層ビルが鉱物の結晶のように煌きます。美しい街、美しい空、そしてその街の美しい生活。

ぷう(屁をこく)

あのですね。本当なら今日はライブのレビューを書こうかな、と思ってたんですよ。昨日ちょっとハタにしては珍しくメジャーなミュージシャンのライブに行ったもんですからね、ええ。

でまあ、何書こうかなー、なんて思ってたんですけど、そこに無理やり割り込んでくる強力なネタがあったので、そっちの話をしたいと思います。

みなさん、黒人さんってどう言うイメージですか?やっぱりスポーツとか、ダンスとか、歌ですよね。ハタはとりあえず黒人さんは歌が上手い、というイメージがあります。ほら、やっぱりブラックミュージックというのはアメリカの文化そのものじゃないですか。かつてナムジュン・パイクも「20世紀は黒人の世紀だった」と言ったように、アメリカやカリブ海、そしてアフリカの黒人さんの音楽というのは世界的な影響を及ぼしたのはみなさんご存知だと思うんですよね。



最近のハタの中では「ベスト・オブ・ええ声」のグレゴリー・ポーターさん

ソウルでもファンクでも、はたまたジャズでも、黒人さんはその美声を誇ってきたじゃないですか。だからついつい、「黒人さんは歌が上手い」って思っちゃうんですよね。で、実際歌が上手い人をたくさん見かけるし。

で、ニューヨークにはそれこそ沢山のミュージシャンが活躍されてまして。ありとあらゆるところで音楽が聞こえるわけですね。それこそジャズもあればソウルもあり、ときにはヒップホップもあり。そしてみなさんのその声の美しさを競っておられます。

そんな中。

今日ハタが向かったダウンタウンブルックリンに、彼はたった一人そこにいました。

大きな建物の前で、薄暗い照明の中、彼はマイクを片手に熱く熱唱します。まさにそれは壇上に設えられた最高のステージ。木枯らしが吹き始めた秋のブルックリンに彼の歌声が響き渡ります。たった一人の、でも最高のライブ。彼は目の前の見えない聴衆に向かって、熱く、そして情熱的に歌い続けます。その驚異のステージをハタはカメラに収めました。

ではご覧ください!


ウルトラ音痴。

あまりの大惨事にその辺を歩いている人が軒並み騒然としています。多少のことでは目もくれないすれっからしのニューヨーカーたちが思わず目を剥いて彼の方向を向いています。何ということでしょう。本人が望む方向とは逆の方向の注目が集まりますが、そんなことは御構い無しに彼はひたすら歌い続けます。そして何を歌ってもひどい。

これはすごい。こんなストリートミュージシャン、見たことない、、、

っていうか、

なんで人前に出ようと思ったのか。

しかもスピーカーまで準備して。ということは人前で歌う気満々でここまできて一人リサイタル敢行って事ですから、ちょっと歌った鼻歌がひどかった、とか、そう言うことではない。堂々と歌い上げて堂々とひどい。

ハタはもうこのあまりの衝撃で思わずこの動画のためだけにVimeoにアカウントまで作ってしまいました。

あれですね、このレベルまで来ると聞いてるだけで平衡感覚に異常が発生しますね。軽い船酔いみたいな。なんて言うんでしょうか、地軸が歪むというか、目の前にあるごくごく当たり前の風景が一気に異次元な光景に見えてきます。おそるべし声の力。

彼の歌声を聞いてしまえばもうオノヨーコ先生の声ですら歌に聞こえます。改めて彼と比較すると、オノヨーコ先生、ちゃんと歌ってたんですね。あ、でも先生の「Blueprint For A Sunrise 」の中の「Rising Ⅱ」という曲は最高です。先生の雄叫びは最高にロックです。でも彼のナチュラルなアバンギャルドさに比較すると、オノヨーコ先生の前衛的な雄叫びはもはや前衛ですらありえません。まさに今日はニューヨークの前衛音楽が自前の音痴に負けた日としてアート界に永遠に記憶されるでしょう。さようなら、オノヨーコ先生。そしてありがとう、オノヨーコ先生。先生はちゃんとミュージシャンだった。奇声だと思ってたハタが間違ってました。


皆さん、ここではっきりとさせておきましょう。これ以上誤解を招いてはいけません。

真実を語りましょう。そして真実を世に広めましょう。

黒人さんでも音痴はいる。

人類皆平等。

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