誰も聞かない音楽レビュー2020(その2)


ということで皆様ご機嫌麗しう。こちらは急に寒くなって来たニューヨークです。

今週に入り気温も下がり、週の半ばにはついに雪が降りました。まあおよそまる1日降り続いたので結構な積雪になり、ニューヨーク州北部の郊外では1m近く積もった地域もあったようです。まあ確かにニューヨークエリアではよく降った方だとは思いますが、日本の豪雪地帯からしたら鼻くそレベル、なわけでして。そこまで驚くことでもない、と言うのが正直なところ。


相変わらず期待の超大型新人・DJむぎちゃんの熱くてハードなプレイは続いており、先日も硬軟取り混ぜたうんこを次々とフロアにドロップ。さらにDJ自らフロアに降り立ちうんこの上でダンスバトル、と、会場内のお客さん(ハタ含め2名)も阿鼻叫喚の地獄絵図と化しておりました。ちょっとあれですね、昔の非常階段のライブっぽい。

高校の時深夜テレビで見て腹抱えて笑った


ええ、アマゾンで電動モップを速攻でポチりました。

明日届くので明日はひたすら床掃除決定です。



ということで「誰も聞かない音楽レビュー・2020」、続きます。


●ヌルい音楽。

2020年にハタが聞いた音楽、その特徴を一言で言えば「ヌルい」だった、というお話は前回しましたが、その数々あるヌルい音楽の中で、ハタが好んで聞いた選りすぐりのヌルい音楽をご紹介。


まあね、作曲されたり演奏されたりする人に向かって「ヌルい」なんて言うのは本当に失礼極まりないのは良くわかってるんです。単にこれはハタの基準値がおかしいだけなんです。ハタにおける「パリッと香ばしい音楽」と言うのはぶっちゃけ聞くのに気合及び体力がいる音楽、ですので、安心して聴ける音楽、と言うだけですでにヌルい、という基準になってしまうわけです。たまにそんな安楽な音楽を聞き続けていると、「これではだめだ!もうちょっと緊張感のあるものを聞いて自分に喝を入れなくては!」と思ってパティー・ウォーターズとかを聞いてはみるんですけど、まあ、毎日は聞きませんよね、ええ。



パリッと香ばしい音楽の一例。疲れた時に聞いてはいけません


まあ、それから考えるとヌルい音楽、と言うのは大変聞きやすく、ほっとする音楽、と言う意味でもあります。殊更主張が強いわけでもなく、静かにお部屋の空気を変えてくれる音楽。まあアンビエント的なもの、と思っていただくのが一番良いかもしれません。


いや、もともとヌルい音楽好きなんですよ、ハタ。もともと人生で音楽を聞くようになったきっかけ、が喜多郎、という、当時バンドブーム全盛の時代の真っ只中いきなりニューエイジ からスタート、という音楽遍歴なものですから、普段聞いている音楽は基本ヌルい。ピョロー、とかヒュル〜ピロピロ、とか、そんなのばっかり。なので日常聴く音楽としてのロックとかポップスは本当あり得ないくらい煩わしい音楽、と言うのが正直なところ。あの辺の音楽は1週間に1回、3分くらい聞けばそれで十分です。残りは基本全部ヌルい、またはヌルいを通り越して若干寒い。そう言う音楽を聞いて過ごしております。


ということで。今年良く聞いた心地よくもヌルい音楽。

ご家庭のBGMにいかがでしょうか。


●ABIAH " ABIAH sings Nina"


まあこの方を知ったのは本当偶然、だったのですが。ニューヨークで活躍されているシンガー、ABIAHのニナ・シモンのカバー集。ニナ・シモンってだいぶ声は低い目の女性だったと思うのですが、その声の低さに合わせた曲を声が高い目の男性ボーカルで歌ってみましょう、と言うアイデアなのですが、彼のしっとりとした艶めいた声と控えめながらも洗練された編曲が大変に素晴らしく。ヌルい、などと言うのは本当申し訳ない完成度なんですけど、まあ心地よいと言う点でお勧めです。


●Murcof & Vanessa Wagner " Statea"

音楽マニアならなんとなく知ってるけど実際どちら様ですか?的なメキシコのエレクトロニカ(死語)アーティスト、Murcofがピアニストとタッグを組んで古今東西の現代音楽の名曲を再構築した2016年のアルバム。現代音楽をこの辺のテクノやエレクトロニカのアーティストが再解釈を施したアルバム、と言うのはいくつかありますが、こう言う企画は大体地雷でして、そのほとんどが大失敗して爆死している中、このアルバムは奇跡的な成功例として挙げられるかと思います。まあその勝因は選曲の素晴らしさでしょうか。バレンティン・シルヴェストロフの「Silent Songs」の中でも特に美しい曲を選んでくるあたり、音楽マニアが見ても「こいつなかなかやるな」と思わせるだけのセンスがあります。他にもサティにリゲティ、モートン・フェルドマンにジョン・アダムス、ジョン・ケージにペルト、と、ごりごりの現代曲作家の作品を扱いながらも原曲の素晴らしさを損なうことなく自分のフィールドの中で手堅くお仕事をされている感があり、ああ、この人はきっと現代音楽好きなのね、と言うのが良くわかるアルバムになっております。同時にAphex Twinのカバーも入ってますが、ダントツでダサい。でもいいんです。ハタはAphex Twin全く興味ないんで。


●Henning Schmiedit " Schlafen"


ドイツのピアニスト/作曲家Henning Schmieditがバッハのゴールドベルク変奏曲をさらに解体、そしてそこからヒントを得て作曲したピアノ曲集。アンビエントな空気感の間からゴールドベルク変奏曲の断片がふと現れては消えていく、大変静かだけれども単なる間延びしたアンビエントとは一線を画す知的なピアノ曲集。季節を問わず静かな時間を過ごしたい方にはお勧めです。とりあえずハタはいろんなことが面倒臭くなった時にはもう念仏を唱えるかのようにこれをかけては閉じこもっておりました。あれもこれも全部ユダヤ人のせいだ(妄想)


●Silvia Iriondo & Juan Falu " Antiguo Rezo"


今年はこのアルバムも良く聞きましたねえ。アルゼンチンの女性ボーカリスト、Silvia Iriondoのアルバム。なんて言うんでしょう、技巧的な歌い方だとは思わないけれども、単純に美しいなあ、と思える声とギター。ものすごく洗練されているものの、同時にどこかに土の匂いも感じるような、独特の空気感です。


●Andaleeb M.Wasif " Andaleeb M.Wasif"


今年色々聞いた音楽の中で特にしみじみと良い音楽だと思ったのはやはりこの1960年代にボリウッド映画音楽の世界で活躍したAndaleeb M.Wasifによる自演を集めたアルバム。いやほんとねえ、デジタル時代の音楽万歳ですよ。こんな素晴らしい音源を発掘してデジタル化してちゃんと売ってくれるんですもの、音楽マニアにとってはこれほど嬉しいことはありません。一昔前だったらこんな音源どこに言っても聞けませんでしたからねえ。決して状態の良い録音データではないですが、この錆びた音と音の間からこぼれてくるような叙情がたまりません。これを聞いて頭に浮かぶのは秋の澄んだ空気の夜。時代の経過があったからこそ、の、この旨味、と言うことで、まさに古漬けになった奈良漬みたいな滋味深い味わいを醸し出しています。



まあ他にもあるんですが、ヌルい音楽の中からはこの辺をお勧めしておきましょうか、と言う感じです。気が向いたらその3があるかもしれませんが、まあ誰も期待はしてないと思うので、その辺は適当に。と言うことで皆様もご興味があれば是非聞いてみてください。






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