ショッピングカートの人生


みなさまご機嫌麗しう。

こちらは数日のしっとりとした雨の後、ぐっと気温が下がり、晩秋から初冬に移行しつつあるブルックリンでございます。みなさまいかがお過ごしでしょうか。朝晩の気温も10度を切るようになったので、ここは外に置いていたサボテンさんを室内に移動させ、倉庫から厚いコートを出したりブーツを出したりして、いよいよ冬の準備です。

ということでこちらは現在土曜日の午後でございます。本来なら結構ブログに書いておきたいネタがそこそこあるんですが、まあそれは後々取っておくことにして、今日は久しぶりに街歩き報告を。


まあ家人もハタも基本フリーランスというか、まあ会社勤めとはちょっと違う感じの人生ですので、基本平日も休日も関係ないんですが、常識というか癖といういうかで、土日は休日っぽく過ごすわけです。で、昼前に「久々にお天気だから散歩でもすっべか、んだんだ」と思いまして。ちょうど先週たまたま行ったエリアが面白かったので、もう一回行ってみようか、と。家人とバスに乗って出かけました。バスに乗ったとはいえたかだか10分ほどですが。


着いたところはブッシュウィック。まあご存知の方はご存知だとは思うのですが、ここしばらくブルックリンでは実際に本当におしゃれかどうかは別としておしゃれな若者が住むエリアとして有名です。こういうエリアで有名な場所はブルックリンだとウィリアムズバーグでしたが、今はもうすでに再開発のブームも峠を越え、気がついたら原宿みたいな人ばっかりいて何一つ面白いものがない街になりました。そういう意味でいうとブッシュウィックはまだそこまでは行ってない、という事で夢と希望でパンパンに膨らんだ自我を抱えた若者が憧れる街となりました。


でもまあ、分かりますよね?もうご存知ですよね?

ぶっちゃけそういうの興味ない、ハタ。


なので、正直その辺に行くつもりもなかったんですけど、先週行ったら案外面白かった。まあそれはおしゃれなお店がある、とか素敵な古着屋がある、とかじゃなくて、おしゃれ若者をゴキジェットで駆除してしまえばそれ以外の住民は基本こてこてメキシコ系である、という事を知ったからなんですね。通りにあるデリがこの見事な面構え。


ブルックリンでもここまでいい感じに腐ったデリはなかなか見かけません。もうワクワクします。

というか大通り自体にあんまり白人が歩いてないあたり、この辺がハタの好きな分野であることがわかります。嬉しくなってスーパーに突撃。


やっぱハタの目に狂いはないなあ(しみじみ)


いい、ここ、良い(絶叫)!


ちなみに家人はここでクッキー(1ドル)を買って立ち食いしていましたのでちょっと貰って食べてみましたが、あにはからんや案外と素朴な味わいで美味しい。アメリカの柔らかいクッキーって柔らかさを保つために相当油脂が入っていて脂っこくて正直あんまり好きじゃないんですが、ここのクッキーはショートニングみたいでサクサクして美味しい。


外を出たら道路脇にそこかしこに路上販売が。いつも思うんですが、メキシコ系の方、ってある意味日本人と近いところあるよなあ、と思います。一言で言うととりあえず働く。仕事の質は別として、自分の出来る範囲でとりあえず「仕事」に携わる、という姿勢ですね。皿洗いでも清掃でも、とりあえず働く。仕事がなくても、とりあえず路上で何かを売ってみる。汚い仕事は嫌、辛い仕事は嫌、と我儘放題した挙句酒やドラッグに溺れて路上で物乞いやってるクズ白人なんかから比べたらよっぽど人間として真っ当です。


ロサンゼルスに住んでいる頃からそうですが、ハタは直接こう言うメキシコの方と繋がりがあるわけではありません。が、彼らの生き様から多くのことを学ばせていただきました。みなさんぶっちゃけ貧乏人。でもみんな家族思いでがむしゃらに働いて。その姿はまさに高度成長期に田舎から都会に出てきて必死になって働き続けたハタの親の世代の姿と重なります。


そんな強くたくましく生きるメキシコの移民の皆さんからハタが学んだこと。それは


人生のだいたいのことはショッピングカートで何とかなる

と言うことですね。



ショッピングカートで花販売。これだけでもう個人事業主。しかも場所移動可能。シンプルながらもこれは「ビジネス」以外の何物でもありません。

そして下の写真。さあこのショッピングカートで何種類品物が売ってるでしょうか?


スナック菓子数種類とそれにかけるソース、数種類のフルーツ、そして熱々のドリンク。カート1台でまさかのおやつセット完成です。


この程度では驚いてはいけません。強者になるとこのショッピングカートの買い物カゴ部にプロパンガスを乗せて金属のプレートを置いてソーセージと玉ねぎ焼いて売ります。そしてそれが超美味しそうだったんですね。


またある時にはこのカートが3つずらっと並んでることがあったんですね。で、おばちゃんが3人並んでるわけですよ。で、

1人目のおばちゃんのカートでタマレ(南米式ちまき)を買い、

2人目のおばちゃんのカートでオチャタ(ライスミルク)を買い、

3人目のおばちゃんのカートでクッキーを買い


これでお昼ご飯とドリンクとデザートが揃う。しかもそれぞれ1ドル。3ドルでお腹いっぱい

しかもこのおばちゃんのタマレが凄まじく旨い。「うちのはメキシコ式じゃなくてエルサルバドル式よー」って教えてくださったんですけど、何式であろうが今まで食ったタマレであのおばちゃんのタマレを超えるものを食べたことがない


最初見たときはあまりの出来事に呆気に取られましたが、よくよく考えてみれば、厨房や店舗を限りなくミニマムにして、自分にできることだけに集中してしまえば、ショッピングカート一つでお商売が可能になるという事実に気がつき、頭を鈍器で殴られたような衝撃を覚えた事を今でもよく覚えています。そうか、これでいいんだ!的な。おそらくお商売としては最も原始的なレベルのお商売ですが、それをやってはダメという理由も無いわけじゃないですか?何か困った時があったらここからのスタートでも誰も困らない。ハタだってもし何かあったらショッピングカートに炊飯器と梅干し乗せておにぎり作って売ったらいいじゃない、と。それ以降自分の将来のことを考えた時に、

「いざとなったらショッピングカートでおにぎり作って売るか」

と思えるようになり、何だか気が楽になりました。


ニューヨークやロサンゼルスといえば華やかで煌びやかな世界ばかりが注目されますし、そう言う生活を享受してることを見せつけたい人もたくさんいます。実際ニューヨーク生活だのロサンゼルス生活だののインスタグラムを見たらどこのレストランがおしゃれだの何だの、って山ほど出てきて、あら素敵ねー(棒)、と。それはそれできっと楽しくて素敵な人生なんでしょうけれども、ハタはこう言うショッピングカートの小さなお店でドキドキワクワクしながらタマレ食ったり自分が知らないスーパーに行っていろんなものを眺めている方が断然楽しいですね。今回はそのちょっとしたワクワクをみなさまにご報告させていただきました。


あ、そうそう。

唐突に選曲してみました。数年ぶりにふと思い立ち、なんちゃってDJソフトで一発録音。

秋の夜のBGMにお聞きください。



このブログをお友達に教えて、お友達も綺麗にしてあげましょう。イオナ。私は美しい。