バベルの塔を破壊した神の怒りはいかほどか。
今や人間は言語という重い岩を背負い右往左往するばかり。
そこにそっと悪魔の影が。重い岩を背に乗せたままじっと耐えるあなたの耳元で囁きます。
「日本人の発音が悪いのはなぜか知ってます?」
「30分で英語がペラペラに!」
今日からネイティブ並みの英語があなたの元に!
嗚呼哀れなるかな小さい人間よ。愚かなるかなこの小さい人間よ。
己が背に乗った言語という重荷の美醜を競い合うとは。
後編:上達したら地金が出る
はい、そこそこ英語が喋れるようになりました。アメリカに住んでます。近所のカフェーの店員さんとも気軽な挨拶ができるようになりました。ご近所さんも不審な目でこちらを見ることもなくなった。それはよかった。
で?あなた何ができるの?
英語ができるようになった=特別ではありません。だって周りの人間は全員英語喋るんですし。単に語学というツールの使い方が上手くなっただけのこと。流暢に英語が喋れるようになっても、中身が空っぽならただただ自分のバカさをより緻密に正確にさらけ出すだけです。朝から晩まで彼氏がどうとか彼女がどうとか、あの靴がどうとかあの服がどうとかファックあのビッチあたいの彼氏と寝やがってとかあの女いつまでたってもオレになびかねーぜ、とか。
英語喋れるだけのバカ量産してどうする。
英語喋るだけのバカ(想像図)
なんか忘れてませんか?英語で自分のことが表現できるようになるということは、自分の質がより深く問われると言うことですよね?英語で物事を緻密に表現すればするほど、あなたの考えや生き方、思想がびしばし相手に伝わっていきます。だって相手も英語わかるんだし。あなたの英語力=相手の英語力じゃないですからね。相手だってこちらの拙い英語力からあなたの意思を深く汲み取っているのです。どれだけ気取って英国風の発音を真似てみたところで会話が空疎なら「ああこいつ中身がない割に気取ってやがる」で終わりですよ。
ついでに言っておきますが、ファック 連発する英語がかっこいい、とか思ってる人、まともなアメリカ人から見たら最底辺のど貧民だと思われますからねー。やめといたほうがいいですよー
例えばニューヨークのインド人。どうしたってインド生まれのインド人だったらアクセントがあります。でもそういう人たち、テックエンジニアでものすごいお給料貰ってます。お話ししたらコンピューターサイエンスからボリウッドの映画の話まで、縦横無尽。知識の豊富さが道具としての言語の不自由さを凌駕するのです。じゃあその人がアメリカで一からその知識を吸収したのか、って言えばそうではなく。インドでコツコツと知識を吸収されてきたのです。
実際そういう人の発音をバカにする人がいないわけじゃない。
でもそういう人って基本社会の底辺の人たちですよ。
底辺に見栄張ってどうするよ。
ではあらためて。
流暢な英語、とおっしゃいますが、
実際あなたの中身はどうなんですか?
のび太+英語=英語喋るのび太
アメリカに越してきてもう直ぐ15年。いろんな在米邦人の方にお会いしてきました。
服飾デザイナーにミュージシャン、寿司職人に運送会社勤務、サウンドエンジニア、銀行員にアーティスト、と職種は様々。ぶっちゃけみんなそこまで流暢に英語が喋れるわけじゃない。やっぱりネイティブの英語には敵わない。時には愛想笑いを浮かべながら、なんとなくごまかすことだってある。時には「日本語でないと伝わらないことがあるよねー」と言いながら、日本語で鬱憤を晴らすことだってある。
でもそういう人たちはみんな知識と技術を持っておられます。そしてその知識と技術は、「英語が上手」という特技よりもずっと貴重なのです。
確かに学生時代に留学させてもらえる学生さんと、そうでない学生さんがおられます。
それは親の懐次第。確かに不公平です。ハタだって留学してみたかった。でもどちらかっていうとハタの家は貧乏。大学に行かせてもらう事だけでも精一杯。生活費は自分でアルバイト。そんな中自分よりも明らかにバカな生徒どもが1年間カナダに留学。帰ってきたバカは事あるごとに「カナダの空が懐かしい」などとフカしてやがりましたが、今となってはよくわかります。
1年ごときで知ったかぶりしてんじゃねーよ、と。
そして留学したって現地で就職もできてねーじゃんよ、と。
結局実際のところアメリカの4年生の大学に行ったって、結局9割9分の生徒はアメリカ国内で就職できずに日本に戻ってきます。まして語学留学なんて海外就職においてなんの意味もありません。海外留学なんてほとんどの学生にとっては単なる輝かしい青春の1ページで終わります。ぶっちゃけロングバケーション。そして結局そのほとんどは大した英語が喋れるわけでもない。
で。
アメリカの就労ビザには比較的明確なルールがあります。
●大学院を出るとビザ申請が飛躍的に通りやすくなる。
●特定の専門職に10年以上就くと高卒でもちゃんと就労ビザ申請の対象になる。
この基準をクリアしようと思えば、日本の大学に通っていようと、アメリカの大学に通っていようと、結局さらに勉強し続けるか地道に専門のスキルを磨くかしかないのです。
そしてそのスキルを磨いた頃にはもう三十路です。アメリカ人ネイティブと同様に喋れるだけの英語を学ぶ頭の柔軟さはすでに失われています。ですが、
英語が上手で就労ビザが取れるわけじゃないんです。
専門の知識と経験があるからビザが取れるんです。
英語喋る前に日本語でちゃんと教養や技術を身につけましょうね、と。
教養や技術を身につけて初めて英語が役に立つのであって、英語だけで何かが特別役に立つということはないのです。そこ間違っちゃあいけませんよ、と。
それから。
勘違いしてはいけません。
日本は英語を経由せずに高等教育を受けられる数少ない国なのです。母国語で世界の最先端の学問や知識を直接受け取ることのできる国というのは限られています。インドだって、マレーシアだって、シンガポールだって、みなさん英語が喋れるのは、英語を経由しないと知識にたどり着けないから。英語という道具がないと最先端の知識に触れることができない、だから英語が必要なのです。日本はちゃんと日本国内で真面目に勉強したら、母国語で最先端の知識を学ぶことができます。まあ当然分野によって多少の差はあるでしょうが、「何があっても留学して英語を勉強しないと得られない情報があるんです!」なんていうのはよほどの大学の博士課程で先端技術の研究でもしていない限りそうそうないでしょう。言い方を変えれば大学レベルの知識であれば別に留学しなくたって日本の大学で十分得られますよ、と。その筋の方は日本の教育はダメだのやれ留学しろだのと言いますが、
日本でできねーやつが海外で評価されるわけねーだろ、と。
落ち着け。そして目を覚ませ。
日本人が英語が苦手、というのは、実質上英語とという道具に頼らなくても生きていけるから、ということの裏返しにしか過ぎません。そして、よほどの優秀なエリート知識層の世界にでも行かない限り、日本の教育で十分教養のある人間が育ちます。にも関わらず何か問題があるのであれば、その教育をうまく利用できなかった本人の資質の問題です。
でもそれが悪いわけじゃない。勉強が全てな訳じゃないですし、そういう勉強が苦手な方は別の専門性を追求すれば良いだけのこと。
その最たる例が寿司職人です。もう寿司職人ひっぱりだこ。アメリカはおろか包丁一本で世界中で活躍できます。技術さえあれば英語が流暢でなくても十分にやっていけて、しかも尊敬すらされるという職種の典型ではないでしょうか。別に寿司職人でなくても、デザイナーでも構いません。日本酒の専門家でもいいじゃないですか。日本で専門性の高い仕事を10年続けましょう。
海外に住みたいと思う若い皆さん。こんなつまんない日本は早く抜け出したい!自分の能力を海外で試したい!お気持ちはよくわかります。でも他の国もどんな才能があるか分かんない人間を迎えて入れてくれるほど親切じゃない。だったら自分が価値があることを証明するのみ。
学生だったら博士課程行け!だが英文科はだめだ!
そうでなかったら寿司握れ!もしくはラーメンだ!
ぶっちゃけ英語なんてその後でもいいです。だってどっちにしたって下手なんだし。でも中途半端な英語ののび太よりは、英語の下手な寿司職人の方がアメリカでは需要があります。
博士課程行くのもしんどいし、寿司握る修行もしんどい。でもそれが出来ないんだったら海外生活はもっとしんどいっすよ、と。自意識過剰な割には大した事ができないアメリカンな若者とまずい飯、何を買っても高価格低品質、下手に病気したら医療費が高すぎて破産、と
何にもいい事ありません(きっぱり)
それでも日本を出たい、とおっしゃるのであれば、10年修行して何かのプロになってください。英語が飛躍的に上手くなることはないと思いますが、その時にはあなたの目の前に大きな世界が広がると思います。
0コメント