アデューブルックリン(後編)


3・試験に出るブルックリン 〜傾向と対策〜


「ブルックリンでのあたしのおしゃれな暮らしを皆さんにお伝え!オシャレ貴族のトレンドを日本の水呑百姓の皆様にお届け!ついでにあたしの作ったアクセサリーを買いなさいこの愚民ども!」


「ヒップホップの聖地・ニューヨーク。ここじゃワルじゃないと生きていけない。でも俺はマイク片手極東の日本という国からやってきたぜセイホーあの摩天楼が俺の夢日本語ラップでニューヨークを制覇してやるぜ」



おやおや。世の中本当におかしな情報に溢れてて困りますよね。

嘘・おおげさ・紛らわしい。

昔ならJAROに電話をしたら話が済みましたが、インターネット時代となっては良い情報も悪い情報も百花繚乱。でももうそんな情報に踊らされるのはまっぴらごめん。一言目にはやれ「ニューヨークでは」「やれブルックリンでは」と偉そうに能書きを垂れる出羽守の皆さん。正直うざいと思いませんか?


そんな皆さんのために、今回はハタが出羽守の皆さんが絶対に語らない、ブルックリン(とクイーンズ)の正しい姿を皆さんにお伝えします。このブログをよく読んで、海外にいるだけで偉いと思ってる●の悪い出羽守のマウントをかわしつつ、楽しく健康的に過ごしましょう。



初級編:「で、あなたはどちらにお住まいで?」


自意識だけは富士山より高い無能出羽守から身を守る方法。それは正しい情報を身につける、ということです。やっぱり教育が大切。知識に勝る武器はありません。


まあニューヨーク出羽守にもマンハッタン在住派ブルックリン派にわかれますが、マンハッタン派の出羽守は基本駐在の妻系が多く、ある意味情報にもお金がかかっています。実際ハタがよく美味しいもの探しをする際にはこういう日本企業の駐在さんの食べ歩きブログをよく参照させていただきます。基本お金に困ってない方達なので、庶民的なお店から高級店まで、ありとあらゆるレストランを紹介されておられるので、食にご興味のある方のブログなんかは本当に役に立ちます。しかも舌も肥えているので変なアメリカ人の美食家なんかよりも数段信頼できます。なのでもし皆さんがニューヨークに来られることがある時には、必ずこのマンハッタン在住の方の食べ歩きを参照しましょう。


対してブルックリン派は信用してはいけません。特にマンハッタンの情報が少ない出羽守は、マンハッタンにいくお金がない人です(きっぱり)


さあ、ここでまずはこの地図を見てみましょう。ハタが引っ越し準備の最中、段ボールに囲まれて作成した雑な地図ですが、これでもブルックリン出羽守の弱点をつくには十分な情報です。


図1:ブルックリンとクイーンズの名称


はい、これが大体日本人がお世話になるブルックリンとクイーンズの地域名です。

すいません、ブルックリンとクイーンの境界線は適当です。あくまでも目安、で。

まずは以下簡単に説明します。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


北ブルックリン(地図上のピンクの部分)


●ウィリアムズバーグ

ザ・成金タウン。日本で言うところの原宿。観光客が行くブルックリンはこの辺。なので頻繁にこの辺の情報が出回りますが、実はこの地域は結構な成金エリア。一等地の居住エリアになると年収1億円がデフォルト、です。ですので、自称夢見るハタチの企業家とかラッパーはまず住めません。従ってこの辺の情報しか載せてない出羽守はほぼ100%他の地域からバイトの休日にやってきてるお登りさんです。ちなみに、今は観光客がゼロなので街はガラガラです。ま、それだけそこに住んでる人の数は少ない、と言うことですね。ま、お洒落といえばお洒落なんですかね。ハタはそのお洒落感には全く魅力を感じません。まあ定期的には行きますが、理由は日本食スーパーがあるから


●グリーンポイント

今まである意味陸の孤島としてほったらかしにされた結果、ポーランド移民の濃厚な東欧の文化がきれいに保存されていたエリアですが、この10年で再開発が進み、ウィリアムズバーグの24時間ウェーイ状態とは一線を画したいが同時にオシャレな世界も維持したい、というややアダルトな人たちが集うエリアです。なので基本的には穏やかな環境で生活しやすいエリア。とは言えこの地域もウィリアムズバーグから目と鼻の先なので、基本的にはお金持ちエリアと化しつつあり、こちらも日本からきてすぐの学生や夢見るラッパーが住むと言うことはルームシェアでもしない限り非常に困難です。ヒップホップって言うよりはポーランド語勉強した方がいいかも、という地域。


●ブッシュウィック

ザ・中途半端。もともとウィリアムズバーグに住んでいたアーティスト達が家賃高騰のせいで引っ越しを余儀なくされた結果、本来ここの中心を占めていたメキシコ系住民の中に割り込んで移住したのがこの地域。なので、アーティストが多い地域、などと言われていますが、実際はこの地域もすでに家賃高騰の憂き目に遭っているので、アーティストはさらにブルックリンの奥地のリッジウッドへ退避。結果的には中途半端に家賃が高い割には何にもない、自意識過剰の若者と成功を諦めたダメ白人が固まって住んでいる、という軽い地獄エリアと成り果てました。まあ古着屋やレコード屋もありますが、ぶっちゃけレコード一つ取ってもセレクトの幅も狭くて正直大したもの売ってません。おそらく日本人の若者が住めるとしたらここが関の山。とは言え住環境がそれほど良い、と言うわけでもないので、何かのきっかけで少しでも収入が上がればここから出ていく人の方が多いわけです。なので、ここにしばらく住んで他のもうちょっと条件の良い地域に引っ越せれば成功の道を歩んでいることになりますが、ここに居続けていたら人生双六に何かの問題がある、と言って良いでしょう。


●ベッドフォード・スタイ

もと魔窟。年々上がる家賃のおかげでブッシュウィック界隈に住んでた人たちがこの地域に移動中。なのでここ数年は再開発ラッシュ。普通にサラリーマンなどをしている共働きのご家庭が、そろそろ子供も欲しいし、できるだけお手軽なアパートでも買うか、という気になった時にはこの地域がまずターゲットに入ってきます。とは言え従来の貧困層が住んでいるエリアはそのまま維持されているので、基本的には犯罪などには要注意。割と空気が荒んでいます。なので、レストランやカフェーなど、生活を楽しむお店がたくさんあるわけでもなく、基本ゲトーなので、決して過ごしやすい環境とは言えません。不思議なことに、この辺に住んでいる日本人はそこそこいるはずなのですが、正面切って「私はベッドフォード・スタイに住んでます!ベッドフォード・スタイ大好き!」とか言って手作りアクセサリー作ってる女の子のブログとか、全く見かけません。


●クラウンハイツ

意外と住みやすそう。もともとは住人の大半が黒人さん、のところに再開発で小金持ちの白人が流入。おかげでオシャレなカフェーやバーはそれなりにあって、ブッシュウィックやベッドフォード・スタイから比較すればそこそこ生活はしやすそう。黒人さん中心の街、と言ってもここにお住まいの黒人さんは比較的裕福な方に入るようで、服装から生活スタイル、その辺の全てが貧困層の黒人さんとはちょっと違いますわよ、という地域でもあります。実際この辺の物件はブッシュウィックやベッドフォード・スタイの物件からすると値段は高め。なので、長年ニューヨークに住んでいる日本人のご家族とかは案外この辺が住みやすい、という方もいらっしゃるようです。ハタも数年前に引っ越しした時にはこの地域をメインの候補地にしておりました。


●パークスロープ

マダムの帝国。煉瓦造りの暖炉のある古いアパート、でも内装はお金をかけてきっちり快適に住めるように改装。あらー、ウィリアムズバーグの新しいアパート、素敵だわー、と言いつつそんなゲスい街には一歩も近寄らずに100年近く経過した歴史的な建物とヨーロッパのような優雅な佇まいの街から出ることもなく。だってパークスロープですもの。確かにこの辺に住んでおられる方は生活にも余裕のある方が多いので、出てくる情報一つ一つの質は高いですが、もともとすでにハイソな世界に到達されている人種なので、今更ながらに背伸びしてお洒落情報を出して自分を良く見せようという感じでもありません。よって年齢層は高め。落ち着いた世界がお好きな方であればウィリアムズバーグなんかよりもこの辺を散策された方がよほど楽しいと思います。


●ダンボ

もとエホバの証人の聖地。ブルックリンの再開発はここからスタートしました。もともとエホバの証人が所有していた巨大な敷地を売り払ったのがきっかけ。ブルックリン橋のたもとにある、非常に風光明媚な場所なので、あっという間に高級住宅地に。まあこの辺もよほどのお金がないと住めない地域です。


大体この辺が日本人がよく話題にするブルックリンのエリア。皆様ご理解いただけたでしょうか。そして今度はクイーンズの説明に入りましょう。


クイーンズ(地図上のブルーの部分)


●アストリア

おしゃれ度氷点下。基本的にはギリシャ移民を中心にユーラシア大陸の全民族がゆるく暮らしている、超地味ながらもいい湯加減の地域。よってかなりの日本人がここに。一説によればマンハッタンのイーストビレッジに次いで日本人が住んでいる地域、とか。なので自称おしゃれ出羽守がブルックリン在住のフリをしてこの辺に住んでいる可能性は十分にありえます。


●ジャクソンハイツ

インドの飛び地。とりあえず美味しいエスニック料理が食べたい時はここ。白人ほぼゼロ。個人的には一番住んでみたい地域だったけれども案外この辺に住んでいる日本人は少ない模様。もしかしたら自称NYで活躍中のラッパーとかはこの辺に住んでいるかもしれない。いや、そんな度胸もないか(笑)



●フラッシング

オメーは中国だ。恐らくニューヨーク最大のチャイナタウン。看板から食べ物、新聞からショッピングモール、地元の裏ビジネスまで全て中華。白人ゼロ。英語ゼロ。本気中華を食べるならここ。当然美味しい。ダイソーがニューヨークに進出した時に選んだ街。よって全くもっておしゃれではない。実質中国だし。しかし実はこっそりここに住んでいる日本人もそこそいる模様。でもそう言う日本人出羽守は「フラッシングに住んでます」とは絶対言いません。


●LIC(ロング・アイランド・シティ)

中国人成金の夢のあと。もともと倉庫街&電車の車庫しかない地域だったのに、マンハッタンから電車で5分、という立地が幸いしあれよあれよと言う間に再開発。味わいもへったくれもないモダンな高層ビルが立ち並ぶようになり、恐らく中国人富裕層をターゲットにした高層アパートも軒並み発売されましたが、まあこのご時世でその目論見も泡と消え。空室ばかりが目立ちます。まさにバブル崩壊。とは言えまあこの立地なので、他の国でお金を持った人がやってくるのは時間の問題、と言うことで、あと10年後にはマンハッタンと同じ状態になっているかもね、という地域でもあります。と言うことでやや新しくやってきた中国移民が多め。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ま、こうして改めて各地域の状況を眺めていくと、おしゃれブルックリン出羽守の大半はおしゃれ地域には住んでいない可能性高しという事実を皆さんご理解いただけるかと思います。おしゃれはしたいが金は無し、となるとおしゃれタウンには住めないのがアメリカの厳しいところ。階級社会です。


ブルックリンはこんなにおしゃれ!そしてそんなオシャレな生活をエンジョイしているオレ最高!日本の泥臭い水呑百姓とは一緒にしないで!と言うブルックリン出羽守を発見したら、まずはこう言ってみましょう。


「ほーブルックリンのどこにお住まいですか?」


ほーブッシュウィックですか。

へー「おしゃれ」なところに住んでるんですねー(にやにや)

で、いつまでそこに住むんですか?



これだけで相手のマウントをかなり弱体化できます。


まして「いや、、、その、、、フラッシングです」となったら、


いやそこブルックリンちゃうで


と盛大にdisって差し上げましょう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


はい、ここまでが初級編です。

そしてこの情報を頭に入れた上で、さらに煽りのテクニックを身に付けましょう。




上級者編:更なる煽りテクニックを目指して


はい。よろしいでしょうか。これで皆さんにも、「ブルックリン出羽守が本当にオシャレな地域に住んでいる可能性は低い、下手すりゃ鈍臭さクイーンズ在住」という事実は皆さんにご理解いただけたかと思います。ここでさらにハタは皆さんに更なる煽りテクニックの習得を期待しつつ、もう一つのの指標をお伝えしたいと思います。

以下の地図をご覧ください。


図2:各地域の人種構成

北ブルックリン(とクイーンズ)の主な人種構成です。


ちなみに今ハタがいるのがピンクのエリア、そして次に引っ越すのがグリーンのエリア、です。これで見ていただければわかるように、成金イタリア人プエルトリコ人、そしてユダヤ系ウルトラオーソドクス黒人に囲まれて生活しております。割とカオス。


と言うことで例えばブッシュウィック。図1と2を見比べていただければ分かりますが、この地域の主な人種構成は「メキシコ」となります。


さあここで応用問題です。


問い1:花子さんはウェブ上でこんな出羽守の文章を見つけました。

ブッシュウィックはアーティストの街でグラフィティがたくさんあってお洒落な街なんですよ!(そしてそんな私もお洒落なんだよわかってんのかこの愚民

さて花子さんはどうやってこの出羽守を煽れば良いでしょうか?(15点)


答え1:

貧しいメキシコ移民を追い出して割り込んだ挙句にお洒落ぶってるだけのダメ白人ばっかりじゃん働けよ


はい、よくできました。他の回答としては、

「アーティストって言うけどほんとにプロ?」

とか、

「でもマンハッタンから超遠いよね」


とかでもブルックリン出羽守のマウントをひっくり返すことができます。アーティストにせよ、あの辺でアーティス気取ってるのの9割は川を渡ってメジャーなマンハッタンには到達できない負け犬ですからねー(ひどいけど事実)


次の問題行ってみましょう。


問い2:太郎さんは以下のような出羽守のインスタを発見しました。

ウィリアムズバークのレストランでお食事をして、お買い物。ホールフーズもあるしアップルストアもあって最高!(そんな人生を楽しんでるオレってイケてない?)


太郎さんができる反論を書きなさい。(20点)


答え2:

住めるようになってから言え


あの辺に住んでる人間は基本ウォール街の金融関係ですしね。本当に住みたかったらヒップホップとかダンスとかやってのし上がるよりさっさと大学でMBAでも取れよ、と。って言うかもうヒップホップとかストリートとか言ってる段階で無理。お疲れ様でした。




番外編:出羽守を問いただしたところブルックリン在住ではなくクイーンズの、しかもフラッシング在住だと白状しました。この出羽守をできるだけ短い言葉でdisってください。


答え:

中国難民?


わかる。すっごい生活しやすそう。外を歩いてる人みんなアジア系の顔だし、食べてるものも近いし。そして実際食べ物は安くて美味しい。街を歩いたら日本の雑貨が売ってるお店はあるしダイソーだってあるし、偉そうな白人もどこにもいないし。ぶっちゃけほんと気楽。


でもそれだったらお洒落出羽守は無理ねー


栃木にいて東京のおしゃれブログ書いてたらダメっしょ?それと同じことですね。



ということでブルックリンで一生懸命生活してる若人を全員敵に回すようなブログを書いてしまいましたが、嘘は言ってませんよ、ということでさらに地味におしゃれ若人を煽って終わりにしたいと思います。ちなみに現在無事に引っ越しを終えて新居でこのブログを書いておりますが、いやねえ、もう天国ですよ。外を歩けばタイのカオマンガイ屋さんが路上でお店出してるし、近所の華人がやってる小さなコンビニ行ったら台湾のジュースとか売ってるし。

鈍臭クイーンズ最高。













このブログをお友達に教えて、お友達も綺麗にしてあげましょう。イオナ。私は美しい。