皆様ご機嫌麗しう。こちらは今年の冬は暖冬か?などと思っていたら毎週必ず1回は雪が降っている(そしてそこそこ積もる)ニューヨークです。個人的な経験でいくと、ニューヨークで雪が積もる、って年に2回くらいあれば十分、くらいの感覚なんですが、今年はもうすでに4〜5回近くになっているでしょうか。どうやらテキサスあたりにとんでもない寒波が来ているそうで、あんな暖かそうな地域があの状態なら、そらニューヨークも雪くらい降るか、と納得したりしなかったり。
ということで、相変わらず無事に地味に死なない程度に過ごしているわけですが。本日はみんな大好きクールジャパンのお話を。
クールジャパン。まあ人によっては賛否両論あるとは思うんですが、ぶっちゃけ海外在住の日本人からしたら本当ありがたいわけでして。だってイメージ戦略ですから、イメージがいい、っていうのはそれだけ良くみられる、っていうことですからねえ。ぶっちゃけ人種差別がはっきりあるこんな国で生きて行く時に、口に出さないにせよ「ああ、日本人でよかった」と思う瞬間はいくらでもあるわけでして。
で。ここ数年ではそのクールジャパンもある意味ピークを迎えつつあり。日本=高品質ハイエンド商品、というイメージを逆手にとって謎の胡散臭ビジネスをする人たちも増えました。まあ胡散臭い、って言ったら言い過ぎですかね。要するに日本人でない人が日本のブランドイメージを使ってお商売。でもねえ、「レストランDaikannyama」とか言われても、正直日本人からすると「ぷっ雑な名前だなあ」と笑っちゃうんですよね、ええ。まあそういうお店はほとんどが非日本人が経営してて、大体アジア系の人が雇われマネージャーなんですよ、ええ。顔が似てるからいいや、的な発想なんでしょうけど、お前らのその雑な人種概念がお前の国に揉め事が多い原因じゃね?、と思わざるを得ないわけでして。
レストランDaikanyama(実在)のお料理。勘弁してくれ。
でまあ、あの人たち、本当自意識だけは人並み以上ですから、これでバンバンお商売するわけですね。まあお商売ですし、押しが強いのも才能のうちですよ。ハタも人様のお商売をくさす権利なんてどこにもありませんし。なので、こういうのを見かけると大体生暖かい目で見守っているのですが。
まあ絶対そんな店にはいきませんが。
そんなある日。Facebookにとある広告が流れてきました。
まあFacebookは割と精密なアルゴリズムを設定しているそうで、住んでいる地域や性別、年齢、人種などを判断してそれに見合った広告を流すそうでして。なので、時々こういうパチモンジャパンの広告が流れてくるわけです。その中でも際立って目立つものがあり。
ほほう。日本人にこれを出してきますか、Facebookさん。広告を見る限りでは日本のハイクオリティの着物を通販しておられるそうで。へーほーふーん。
ハタ、実は貧乏人の子ですが繊維業の家系でして。母方は丹後ちりめんを織っておりましたし、父方は友禅の染めつけ師。母は坊主の袈裟に刺繍をする仕事、と、がっつり布に関わる環境で育ちましたので、布や刺繍には結構興味がございます。なので海外にターゲットを絞った着物とは?というのに興味を持ちました。
こちらのホームページにはこんなことが書かれておりました。
もう面倒くさいので翻訳もしませんが、ざっくりいえば「日本のKaizen(改善)をキーワードにより良いものを作ってます!」みたいなことなんですが。そうですかそうですかそれはそれは。
じゃあ言わせてくれ。
改善の結果がこれか。
これ浅草とかで売ってる外国人観光客向けのキモノガウンじゃねーか。今時誰がこんなの喜んで買うんだよしかも値段もぼったくりじゃん
しかも
あかりさんちょっと日本語不自由。孫も困惑。
ハタ、ここで俄然このお店に興味を持ちました。だって
ここまでひどいのはちょっとない。
クールジャパン詐欺もここまできたか、と。ということでここのホームページを詳しく調べてみたわけですね、ええ。そしたらもう突っ込みどころ満載で。
この写真、見覚えがあるのですぐ分かりました。
東京・神田の紳士着物屋さん、Y&Sonsの商品写真です。
つまり画像まるパクリ。この段階でいろいろアウト。
さらに。
「日本の富士山の近くで手作りされています」という文章と共に動画が載せてあるのですが。
その動画の舞台がこちら。
調べてみましたよ、ええ。
秋田の呉服屋さんでした。
多分秋田の呉服屋さんもこんなところで宣伝動画がパクられてるとは思ってないはず。
さらに日本にお店があるらしいんですよ、ええ。
すごいですねー、日本に実店舗があるんですって。
住所はこちら。
ま、当然Googleで調べちゃいますよね、ええ。
そうしましたら。
バーチャルオフィスかよ。
もう胡散臭いにも程がある。今で興味半分でこういうネット上にしか存在しなさそうな謎のお店を調べてきましたが、ここまでいい加減なのはかなり珍しい。っていうかそもそも商品がアレ。果たしてこんなネットストアを開店させて本当にお客さんがあるのだろうか、と思いながらもさらに調べます。
一応日本にもバーチャルオフィスを借りてぱっと見は日本のお店のようにしているこの会社。良く調べてみると会社はアメリカ国内にあるようです。
はい、そうですか、ということで早速調べてみましょう。こちらがこのキモノを売っている会社の所在地になります。
どこやねん。
ここまで来て少し考えが変わりました。今までは単なる偽装日本ブランドぱちもん商法か、と思っていたのですが、これはちょっと違うケースかもしれない。と言いますのも。この会社の所在地。
デラウエア州です。ご存知の人はご存知の、アメリカにおけるタックスヘイブンの役割を果たしている地域。デラウエア州には法人税がなく、大量のペーパーカンパニーが登録されているのは有名な話。実際、調べてみるとこのTakane Design LLCという会社は、この画像の右の奥にある三角形の屋根の建物、ということになっておりますが、こちらの建物、ペーパーカンパニーを設立し続けて30年、というなかなか香ばしいコンサルタントのオフィスのようでした。
所在地は全部バーチャルオフィスかペーパーカンパニー、画像は全て他のお店からのパクリ、動画もパクリ、商品もまともなものがなく、しかもぼったくり値段。どう考えてもこれでお客さんが買うとは思えない。そもそもお商売として成立していない。ということは、
脱税かマネロンですね。
おそらく架空の会社を作って赤字決済を作るか何かして税金を逃れようとしているんじゃないでしょうか。Facebookの広告に出した理由は「実際に営業していますよ」というアリバイ工作だと思えば辻褄が合います。日本にわざわざバーチャルオフィスを設定してまで工作しているところを考えると、恐らく日本にオフィスを置くことで何かお金の流れを誤魔化せる方法があるのかもしれません。どちらにせよ多分違法ではなく脱法行為。
最初は「いい加減なクールジャパン便乗商売しやがって」と思いながら調べてみたら結構香ばしい結果が見えてきました。いやあ、こんなケースあるんですね。でもまあFacebookで出てくる広告、変なの多いですからね。案外我々がみてる広告の何割かがこういう謎の会社が架空の営業を証明するための手段になっているのかもしれません。確かにこんなもん売れるのか?みたいな広告、多いですもんねえ。
それにしても、本当になんでも調べられますね、インターネットって。おかげさまで新たな知見を得ました。クールジャパンで脱税。
クールジャパンもここまで来たんですね(遠い目)
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